無事なら大損の生命保険②

知らなきゃ大損! 生命保険の基礎知識

 今回も、生命保険のコンサルティングの実況中継をお送りいたします。私の友人(大手生保のセールスをやっているお義母さんから保険に加入。絶対解約できないと言っていたのに、わずか30分で解約を決意した)への、私の先生のコンサルティングダイジェストです。

「で、6つ目の問題点は、この“入院特約”です。医療保障は、多くの方が“死亡保障と同様またはそれ以上に必要”という感覚を持っていますが、その基本は、
 1、単体の「医療保険」に
 2、終身保障で
 3、1人1契約 が基本となります」
「まず1の“単体の医療保険で”ですが、現在の契約は“入院特約”つまり主契約のオプションです。ですから、もし主契約のお金が払えなくなるようなケースが生じた場合は、オプションの入院特約も消滅してしまいます。また“幸い、もう死亡保障は必要なくなったから入院の保障だけでいい”という場合にも、入院の特約だけ残すということは出来ません。さらに、入院特約の保障内容を変えたい時、主契約も変更しなければならない場合もあります。対して単体の“医療保険”ならば、医療保険自体が主契約ですから、今挙げたような不都合は生じません。つまり、使い勝手が違うのです」

「2つ目の“終身保障で”は当然ですよね。医療保障こそ生涯の保障が必要です。対して現在の契約では65歳で225万円もの一括支払いを行って特約を継続しても80歳で終わる保障となってしまいます」

「3つ目の“1人1契約”というのは、たまに、ご主人の契約のオプションとして奥様の入院特約が付いている場合がありますが、これでは、ご主人が死亡した後は保険契約自体が終了してしまいますので、以降の奥様の入院保障もなくなってしまいます。今は、単体の終身型の医療保険が山ほどありますから、特約ではなく、そうした保険に入るべきでしょう」

 医療保険加入の基本は「単体の医療保険に」「終身保障で」「1人1契約」という事でした。コンサルティングを受けた友人も「なるほど!」と納得です。

 教官は次なる問題点を指摘しました。
「そして問題点の7つ目は、この“三大疾病用の定期保険”です。この特約の内容は80歳まで、死亡時は500万。ただし三大疾病と診断された場合には、死亡保険金の500万円をその時点で給付、というものですが、この特約に払う保険料を計算してみると、合計で約720万円。つまり、保険料が500万円を超えないうちに、死亡または三大疾病にならない場合には損をしてしまうんですよ。こんなことを言うと、セールスの人は“保障なんだから仕方ない!当然のことよ”なんて、ムキになって反論してくるんですけどね(失笑)・・・」

「でも、実際には、この保障こそ、医療保険と同様、終身での保障が必要な部分でしょう?それならば三大疾病用の“終身保険”に加入すればイイんですよ。そうすれば、支払う保険料が保障額を上回るなんていう事はなくなるのですから。しかも、入院特約を単体の医療保険に変えることで、65歳時の225万円の一括支払いはなくなる。同様に、この三大疾病用の定期特約を単体の終身保険に変えることで、65歳から70歳までの年払約20万円、70歳から80歳までの年払約45万円もなくなる。その方がはるかに現実的だとは思いませんか?」

 友人は「母から加入した保険だから、絶対に解約できない」と言っていたことなどすっかり忘れ、
「もう、本当に頭に来る!絶対に解約してやる」としきりに口に出します。教官はその度に「でも、お義母さんが悪いんじゃないですよ。自分の子に損をさせてやろうなん思うはずはないのですから。悪いのは“保険とはそういうもの”としか教えない会社なんですよ」とフォローしていました。

「最後の問題点は解約返戻金です。これは、問題点と言ってよいかわかりませんが、この保険設計において、貯蓄性のある部分は、主契約である終身保険 300万円の部分だけです。この部分に相当する毎月の保険料は約2千円ですから、毎月の保険料約18000円の内、16000円が掛け捨てになっています」
「掛け捨てだから悪いというわけじゃありませんよ。ただ、必要のない掛け捨て保険に保険料を払っているのであれば、非常にもったいないことです。ところが、現在の保険設計においては、子供なし、ご夫婦2人の家庭に対して、お子様のための保障が契約内容の大部分を占めている……それがすべて掛け捨てというのは明らかにもったいないことです」
「その結果、25,270,000円のお支払いに対し、65歳の時点でも、解約返戻金は約 160万円。参考までに私の保険は、子供が1人居る状態で、支払いの総額は約 800万円。対して、65歳時に解約した場合の解約返戻金も約 800万円。こうした設計は充分可能なんですよ」
 友人は言いました。
「私もその設計がイイ!是非教えて下さい。でも、今、思い出したんですけど、義母は“この保険は掛け捨てじゃないし、老後には年金にもなる”って言ってたんですけど?」
 教官は笑って答えました。
「もちろん全部が掛け捨てという訳ではないですよ。65歳の時点で約 160万円は貯まっているんですから。ほとんどの部分が掛け捨てということです。また、年金に変えられると言っても、約 160万円の解約金を10年の年金で受け取ったとして年間16万・・・自分の子どもにまで、こうしたセールストークが出てきてしまう教育をする会社って・・・怖いですよね」

 教官は、私の友人の生命保険契約における8つの問題点を提示しました。ここで再度整理してみます。

1、支払総額
 お支払い総額は約25,270,000円。こうした高額の買い物にもかかわらず、この金額が明示されていない。

2、65歳以降の保障額
 上記の支払いに対し、保障額は65~80歳が800万円、80歳以降は300万円。無事長生きすると大損してしまう。

3、月々のお支払額
 自動更新によって月々の保険料が40歳時:約3万、50歳時:約5.3万、60歳時:約9万とアップする。

4、65歳以降の保険料のお支払い
 65歳時に一括で約225万円。65~70歳は年払で約20万、70~80歳は約45万の支払いが必要になる。

5“必要保障額”の考え方
 必要な保障額と保険設計が合っていない。夫婦2人だけの家庭に対し“いないお子様のための保障”が契約の大部分を占める。

6、入院特約
 入院保障は主契約を継続しないと消滅する。しかも保障は80歳まで。入院保障を準備する際の基本は“単体の保険で終身保障”。

7、特定疾病特約
 お支払い額が保障額を上回ってしまう。これも、必要な場合は終身保障で準備すべき。

8、解約返戻金
 不必要な保障のために保険料の大部分が掛け捨てになっているため、貯蓄性は非常に低い。

 横で一緒に聞いていた私は、最初の3つを聞いた時点で具合が悪くなっちゃって「あぁ、もういいです、分かりました」って言いたくなっちゃいましたが、残りの5つを聞き終えて、こうも何もかもが合っていないものを実の親が子に販売しているという事実に戦慄を覚えました。それと同時に、こんなに問題が山積みなのに、教官はホントに全部解決できちゃうの?と早く続きを教えてほしくてワクワクしてしまいました。
(続く)

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